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【インタビュー】Google、ルメール、ZOZO…ユニクロ柳井社長がパリで語ったこと

パリ中心部、コンコルド広場を臨む歴史的な美術館に、赤いスクエアロゴが掲げられた。ファッションウィークの真っ只中にユニクロの展覧会が行われるためだ。展示品はニットにまつわる物のみ。なぜパリ、なぜニットなのか?会場内の一室でファーストリテイリングおよびユニクロの柳井正 代表取締役会長兼社長にインタビューを行い、欧州事情からIT企業との取り組みまで、ニットを起点に幅広く聞いた。 現地レポート>「未来のニット」とは?ユニクロがパリの美術館で展覧会 ユニクロとパリの関係 ーまずはユニクロの軌跡から。パリに進出してからブレイクスルーとなったことは?  やはりオペラ地区の旗艦店出店(2009年)と「+J」というコラボを販売したことですね。それとマレ地区への出店(2014年)も。そして今回のこともそうなるでしょう。アジアのブランドとしてファッションウィークの時期にこういった展覧会をやるというのは、本来すごく勇気のいることですから。 ーなぜこの“パリコレ”の期間中に展覧会を開いたのでしょうか。  やはりパリは世界のファッションの中心。ブランドだけではなくジャーナリストも集まりますから、我々がどういう考え方や想いを持っているか、どういう生産をしているのか、ニットを例にして理解して頂きたい。これが一番大きかったと思います。 ーニットが最も伝えやすいということでしょうか。  まず今が秋冬シーズンですからね。メリノやラムやカシミヤなど、ニットはメイン商材です。それからホールガーメントのような先進的な技術が日本にあるということ。これは未来に向けた技術で、これからの生産は自動編み機のようなもので変わっていく。そういったことを伝えたかったのです。 ー特に島精機製作所との協業で開発した「3Dニット」を打ち出しているようですが、どういった意味があるのでしょう。  今の時代にふさわしい服というのは柔軟な服です。ニットやカットソーとか、着心地が良い服というのは柔軟ですよね。ニットにおいてはホールガーメントは素晴らしい技術で、糸から作っていくので縫い合わせる必要がない。デザインはプログラミングができて、それを生産現場に共有すればサンプルをあまり作る必要もない。デジタル時代に最も通用する技術だと思いますね。 ー展覧会はハイテクというよりも、リアルでハイタッチな内容でした。  ハイテクは手段なんですよ。リアリティがないといけないので、あえてこういう内容にしたんです。この業界の悪い部分でもあるのが、イメージだけでリアリティがないということですね。我々がリアリティを発表したということは、画期的なことなんじゃないかと思っています。 ニットを注文生産に? ー島精機製作所との協業の見通しとして「注文生産で工場から個々に届けていくこともできるのではないか」という話が出ていますが、具体的なところは。  将来的にということです。共に取り組んできているので、実験のようなことをお互いに早くやっていきたいと思っているところですね。 ー日本企業のZOZO(元スタートトゥデイ)がゾゾスーツ、それからプライベートブランドの「ZOZO」で、個人に合わせた服を提供するということをやり始めています。そういった取り組みはどのようにご覧になっていますか?  本当の意味で個人に合わせるには、インターネットの中だけでは難しいんじゃないでしょうか。決まった商品ならできるかもしれないですが。素材や風合い、フィット感、シルエットの好みが全部違うでしょうし、コンサルティングのようなことも必要でしょう。採寸だけ、デジタル上だけで全部解決するとは思えないんです。 ーではユニクロで注文生産をやるとしたら?  僕は実店舗も必要だと思いますよ。実店舗とインターネット販売をどうやって結びつけるかということの方が大事なんじゃないかなと思います。 ー新しい購買の方法も出てきています。例えば定期便で届く服を自宅でフィッティングして、合わないものは返品したりとか。  そういった新しい方法が、それこそ資源の無駄遣いじゃないかと思うんですよ。返品なんてとんでもない。3つ注文して自分に合う1つを選んで返品する。これ運賃の無駄遣いですよね。良くないと思う。店に来てもらって自分の気に入った商品を買ってもらう方が、よっぽどエコだと思いますけど。 ITに頼ることはない ーECの拡大に伴って、今後の出店数に影響は?  いやどんどん出店していこうと思っていますよ(笑)。やはり服を買うのに店舗が無くなるということはないでしょう。実際に着てみてから、こうしたいと要望が出るわけじゃないですか。 ー店頭客のリアルな声から問題解決していく?  それもそうですし、反対に我々の方からリアルな提案をしないといけない。そこでクリエイターやデザイナーが必要になってきますよね。感覚が半歩から一歩先に行っている人たち。潜在需要を掘り起こすということには、クリエイターが必要なんです。 ーチャットで客の質問に応答する「UNIQLO IQ」ではAIを活用していますね。  AIやIT、そういったものに頼ることはない。あれはインフラですから将来は普通になりますよ。我々はインフラとして使っている。要望されているものは何か、そのためにどういうことに利用するのかの方が大事です。反対にIT業界の人たちはリアルが欲しいと思っていますよね。 ーIT企業になる訳ではない。  手段ですよ、ITっていうのは。目的のない手段というのはありえないので取り違えないようにしないと。今までよりも時間的に早くなるだけであって、ITを使ったら良い商品が瞬時にできるんじゃないか、ということはありえないんです。 ーそういった幻想はありますね。  幻想ですね(笑)。だからもっと、自信をもって仕事をした方がいいと思いますよ。 トップクリエイターと共に ーユニクロのデザイン面の考え方は?  まずシンプルな服にこそ、クリエイティブが必要だと思っています。奇抜なデザインがデザインだと思っている人が多いんですが。あらゆる人が楽しめて、クラシックでベーシックでトラディショナルなものと今の流行を良いバランスで作った服が、良いデザインだと思っています。特にニットは色。あと素材感も楽しむというもの。そのためには、やはりヨーロッパのクリエイターたちと一緒に仕事をすることも大事だと思いますね。 ーパリにR&Dセンターを置き、デザインチームを率いるアーティスティックディレクターとしてクリストフ・ルメール氏を起用しています。それによって変わったことは?  彼は感性と論理を両方とも備えたデザイナーだと思いますし、ファッションとファンクションを融合させることが非常に上手な人。そして、少しだけ未来に行ってる服を作るのが上手な人だと思います。我々の服がファッションとファンクションの両方を持った服に変わる、という意味で彼の力は大きい。我々自体も彼によって変わるし、彼も我々によって変わるんじゃないかなと思っています。 ー契約の延長と共にルメールの株式49%を取得しました。なぜ出資したのでしょうか。  僕が彼のことを尊敬している。そして彼もユニクロというブランドに対して尊敬してくれている。お互いに助け合っていこうということだと思います。49%という数字を見てもらったらわかると思いますが、過半数じゃない。彼のブランドの経営は彼にやってもらって、その代わりユニクロのために仕事をして欲しいということです。 ー今後のクリエイターとの展開は?  世界中のトップクリエイターたちと一緒になって、お客様の半歩前に行くことをやっていきたい。人が潜在的に欲しいと思うものを、クリエイターの人たちは知っています。デザイナーのエゴは無しにして、本当に着たいなと思うデザインをいかに早く完成品にしていくか、ということだと思いますね。 Googleに期待すること… Read More »【インタビュー】Google、ルメール、ZOZO…ユニクロ柳井社長がパリで語ったこと